>他のラボに聞いたところ、溶液にハイターを加えているそうですが、
いまだにそのようなラボがあるというのが驚きです。すぐに注意してやめさせましょう。
次亜塩素酸でEtBrを処理すべきでないということは、Molecular Cloningの初版(通称"Maniatis")にも載っていたくらいですから、かれこれ四半世紀は前から常識だったはずなんですけれど。
EtBrは生きた細胞には取り込まれないので、そのままでは変異原性はほとんどありません。変異原性試験(Ames Test)では、生体に投与された場合の代謝産物(たとえば肝臓の毒物代謝)の効果シミュレートするために、マイクロソームで処理した物質のアッセイも行われます。マイクロソームで代謝されたEtBrは、生細胞に取り込まれるようになって、かなりの変異原性を示すようになります。
一方、次亜塩素酸で処理されたEtBrは無処理のEtBrに比べると、マイクロソームで処理したときの変異原性は下がりますが、マイクロソームで処理しない場合は、おそらく次亜塩素酸で処理によって生細胞に取り込まれやすくなっているために、かえって高い変異原性を示します。
少なくとも作業者にとって、EtBrの汚染を受けるのは体表であり、生体内で代謝産物を生じて変異原性にさらされような事態は起こりません。しかし、次亜塩素酸処理されたEtBrは、そのままで高い変異原性をもつので皮膚についただけでも危険と言えるのです。
また、EtBrは適正に焼却すると分解して無毒になると考えられていて、活性炭で回収した場合もこのように処理するはずです。しかし、塩素で処理された場合、焼却によって毒性の高い物質(ダイオキシンのような)が発生する可能性があるので、最終処理の道を閉ざしてしまうことにもなりかねません。
EtBr廃液の処理としては、次リン酸/硝酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムで酸化、無毒化して排水するという方法がないこともないです。しかし、近頃は環境への配慮から、排水にいろいろ流すのはやめましょうという方向になっていますので、おすすめしません。 |
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