一番よくつかわれているのは、largeT antigen/SV40oriの組み合わせです。293T, Cos7といったlargeTを発現する細胞にSV40oriをもつプラスミドを導入すると、爆発的に細胞内episomal plasmidのコピー数が上がるため、非常に強い発現が望めます。だたし、その発現は長期間望めません。薬剤耐性マーカーを使って維持することは可能でしょうけど、そういうことをしているのを見たことがありません。マーカーでセレクションして安定導入株を作ったというのは見たことがありますが、染色体に組み込まれているような感覚で書かれている論文はあるにはある。ていうか選択(細胞が死んでいく)がかかる段階であまり長期維持に向いてないといえるかもしれません。
お示しのEBNA1/oriPも結構昔から出回っていますがあまり使った論文は見つかりませんね。1990年代にはそういうプラスミドの発表があります。遺伝子治療関連でも組み込まれないという理由で一時注目されたこともあったようですが、そもそもプラスミドを導入するというのは効率などの問題もあり、そのうちアデノやAAVなどにトレンドが移ったような感じがします。単純な酵素欠損でEx Vivoで導入し簡単に戻せるような系なら有効なような気がしますが、現状どうなのかはフォローしてません。ただそうは言っても分裂する細胞なら特にプラスミドは抜け落ちていくので繰り返し治療しなければならないでしょう。
実験レベルでは薬剤耐性マーカーを使うことで維持は可能のようですが、発現レベルに関してはよくわかりません。ただし発現の強さはプロモーターで補えるなら、そこはあまり問題にならないかもしれません。
薬剤耐性マーカーを使わないで培養を続ける場合も長期維持されているようですが数か月で落ちていくようです。
デメリットは何かなと考えを巡らせると、EBNA1/oriPで4kb弱プラスミドにスペースが必要で、発現ベクターとして構築するとインサートを入れると結構でっかくなることです。それでも非現実的とまでは言えませんけど。
もう一つはEBNA1は発がんに寄与していて、細胞内のいくらかのタンパクとの相互作用も確認されています。
とは言っても、まあインテグレーションなしで維持できるなら(もしかしたらセレクションも効率が高ければ簡単かなと妄想も手伝って)悪くない系ともおもえるので、今後考えてみてもいいかもしれません。
episomalではありませんが、インテグレーションなしで発現を維持できるシステムがもう一つあります(思いつきます)。human artificial chromosome (HAC) です。これも多分薬剤マーカーを使わないとそのうち抜け落ちていくと思っています。検索するとiPS誘導に使われている文献がありました。
doi.org/10.1371/journal.pone.0025961
EBNA1/oriP関連の文献
doi.org/10.1038/sj.gt.3300736
doi.org/10.1038/sj.gt.3301808 |
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