その神経幹細胞はexpansion培養できる(cell cycleに入っている)ならば、retrovirusでトライしてみるのも良いかもしれませんが、LTR(retrovirus内在のプロモーター)は細胞分化に伴い不活化する事が知られているので(神経細胞分化の場合にどうかは専門でないので断言できませんが)、神経系の細胞に終末分化させてからGCVを投与するのであれば、lentivirusの方が無難かもしれません。retrovirusもlentivirusも基本的には random integration でゲノムに組み込まれるので、挿入部位やコピー数によって、発現レベルがある程度ばらつくのは避けられないと思います。例えばneurosphereの系を用いる場合は、パッセージの際にinfectionすれば、secondaryのsphereを作った時にクローナルになるので、ires EGFPなど蛍光マーカーを入れておけば、発現の高いクローンを選択できると思います(ただし、蛍光マーカーの発現量とHSV-TKの発現が完全にパラレルではないので注意が必要ですが)。viral vectorの場合、濃縮が可能で、MOIを調整する事により導入効率をコントロールできますが、iPS由来神経幹細胞での実際の導入効率については神経系の専門の方に聞いてみてください。
もし、short-termの実験系を考えていて、ゲノムにintegrateしなくても良いのであれば、adenovirus やnucleofectionでも良いかもしれません。adenovirus (type 5)のinfectionは、受容体(Coxsackie/adenovirus receptor, CAR)依存性ですが、マウスの神経幹細胞はCARを発現している事がどこかの論文に出ていたと思います(すいません、ちょっと雑誌名まで思い出せません)。
簡単かどうかは、ベクターのコンストラクトから作ってvirus packagingの系を自前でセットアップするのか、出来合いのvirus溶液を買って振り懸けるだけなのか、によって全然違うので、何とも言えません。もし自前で全部やるのであれば、adenovirusは結構大変なので、lentivirusの方が良いように思います。もしready-to-goのvirus溶液を買うのであれば、adenovirusが一番簡単かもしれません。 |
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