ヒト大腸癌由来の細胞株には、ERK上流のシグナル系に変異が入っている細胞株が多々あり、そのような細胞株ではERKは恒常的にリン酸化しているかもしれません。その場合は、血清飢餓でもリン酸化はあまり影響を受けない可能性があり、そのような状態で化合物処理してリン酸化が亢進するという現象の意義は、よく考えてみる必要があるかもしれません(必ずしも増殖のシグナルになるとは限りません)。お使いの細胞株においてERK上流のRTKs、KRAS、BRAFなどに変異があるかどうかは、調べておいた方が良いかもしれません。
化合物というのが、細胞内シグナル系を阻害する化合物(例えば、ERKを脱リン酸化するフォスファターゼの阻害剤)なのか、細胞表面の受容体に結合してシグナルを伝達する化合物なのかによって、解釈が変わるかもしれません。
ERK経路の過剰な活性化は、細胞増殖よりも増殖停止を引き起こす事(oncogene-induced senescenceと呼ばれています)も知られています。お使いの化合物で処理した場合、ERKのリン酸化亢進が持続するのか、一過性なのかも大切かもしれません。
個人的な経験ですが、HCT116 (KRAS変異)、 HT29 (BRAF変異)などでは、血清フリーでもBrdUのuptakeがそこそこ残ります。お使いの細胞では、血清飢餓条件でBrdUの取り込みは完全に無くなるのでしょうか? それとも、ある程度の取り込みはあるけど、化合物で処理しても取り込みの増加がないという事でしょうか? もし化合物によるERKリン酸化が持続性であるなら、BrdU処理もパルスではなく、オーバーナイトとか長めにしてみると、また違った現象が見られるかもしれません。
解決済みとの事ですので、いらぬおせっかいだったら、ごめんなさいね。 |
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