Immunologistではないので、よく分からないところもあるのですが、気になる点がいくつかあるので、コメントします。
(1)GFPでソートした時点でのCD4/8はどうなっていますか。先々CTLとして使うという事は、この時点でCD8+の細胞が選択的に感染、増幅されているのでしょうか?
(2)ソートしたGFP陽性細胞をOKT3とIL2で増幅した後も、GFPの発現は維持されていますか?もし培養中にLTRが不活化してしまうと、GFPの発現が低下し、同時に目的の抗原特異的TCRの発現も下がります。
(3)OKT3自体が抗CD3e抗体だと思うのですが、この抗体で培養された細胞を他の抗CD3抗体で染めて、細胞表面のCD3発現量を見れるのでしょうか?もし培養中に結合したOKT3が、CD3検出用の抗体の結合と競合するなら、「CD3抗体の付きが悪い」のは細胞表面での発現の低下を必ずしも意味しないですよね。
(4)遺伝子導入されたTCRと、内在性のTCRを区別する検出法が「目的のTCRが発現していない」事を確認するのに必要ですね。細胞を採取してmRNAで見れば良いかもしれないけど、細胞表面に出てる事の確認には蛍光ラベルされた導入TCR特異抗原とか必要なのでしょうか?
(5)最終的な活性化には特異抗原とAPCが必要と思いますが、その前段階での増幅には必要ないように思います。腫瘍抗原に対する特異的TCRを遺伝子導入したPBLを抗CD3+IL2で増幅して戻す免疫遺伝子療法が臨床試験で試されており、ex vivoでナイーブのまま増幅されたPBL由来のT細胞が体内で腫瘍抗原やAPCと接触すれば抗腫瘍免疫を十分発揮すると考えるに足るエビデンスがあるのだと思います(専門外なのであくまで推測ですが)。ちなみにレトロネクチンを販売しているタカラバイオのウェブを見ると、「レトロネクチン拡大培養法」と称して、レトロネクチンをウイルス感染だけでなくT細胞増幅にも使う形で臨床試験をやってるみたいなので、今の系にレトロネクチンを足して増幅してみるのも手かもしれませんね。
いずれにせよ、TCR導入T細胞の増幅をきちんと定量できる系を固める事が第一のような気がします。その上で、増幅効率の改善や、最終的な活性化のプロトコールの検討が可能になるのではないでしょうか。 |
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