Th1/Th2の分類は私の認識が正しければ1986年にCoffmanらによってCD4 T細胞クローンが、IFN-γを産生するタイプ(Th1)とIL-3を産生するタイプ(Th2)に二分されるという報告が最初だと思います。Th2は後にIL-4を指標にするようになります。これは当時、suppressor T細胞(これは存在が限りなく疑わしくなった)からTh1/Th2のバランスで免疫系を説明しようとする潮流に乗り、キーワードになりました。近年、Th1, Th2は転写因子、T-bet, GATA-3によっても規定され、確固たる地位に就いてます。一方、順番でTGF-βを産生するというTh3というのも1994年に提唱されましたが(はじめは“Th3?”とか控えめに書かれてました)、多分に概念的で、細胞区別のマーカーとかが出てこず、広く受け入れられるに至っていないグレーゾーンになってしまいました。それを避けるためかどうかはわかりませんが、IL-10産生するT細胞をTr1と呼ぶことにした、という新たな番号付けの細胞区分も提唱されて(1997年)、次のTh4などの番号付けは苦しくなってきました。ちなみに、Tr1というのも細胞集団としてはちと曖昧で、今ではTr1-likeとかぼやかされて使われることが多いようです。
Th17というのは、IL-17を産生するCD4T細胞集団は、IFN-gやIL-4を産生するT細胞集団とオーバーラップしない特殊な細胞であると発見からきて、ともかくもIL-17を産生する細胞をTh17と呼んでみました、という単純な命名が最初です(2005/2006年)。すぐにTh17を規定する転写因子も見つかって広く受け入れられました。似たようなのに、IL-9を産生するからTh9というのも出てきましたね(2008年)。
ちなみに、そのような呼び方の流れに入らず独自路線にCD25+ suppressive T細胞(1995年)と呼ばれいた細胞群も、Foxp3というlineage specificな転写因子の発見(2003年)により、naive, Th1, Th2, Th17, Foxp3+ Tregと5大CD4 T細胞分類に入ります(Th0も便宜上つかいますが)。
まあ、実在する物質によって規定されるインターロイキン名と異なり、細胞の区分は新しい知見により古くさくなることがあり得ますし、生体内ではスパッと分かれないこともあるしで、Th1, Th2, Th17もとりあえず便利な俗称と思っていいのではと個人的に思います。(でももしレポート書いているなら、俗称なんて表現しないでくださいね) |
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