私自身はHepG2を使って実験した経験はないので、あくまで一般論としてコメントします。濃度のレンジについては、既知の情報に基づき適切に設定されている事を前提にします。
(1) その抗がん剤の作用機序に基づく変化が濃度依存性に見られるか見てみる。例えば、DNA障害を起こす事が知られているならば、DNA damage fociがその抗がん剤により誘導されるかどうか、もしある種のシグナル伝達系を抑制する事が知られているならば、そのような変化がみられるかどうか、といった感じです。
(2) もしそのような変化が見られるならば、お使いになっている抗がん剤そのものは機能していると考えられます。この場合、上の例にならえば、HepG2はDNA障害に対する checkpoint機能を失っている、その抗がん剤が標的とするシグナル伝達系に依存しないで生存増殖できる、といった感じの結論となるかと思います。
(3) もしそのような変化が見られないならば、使っている抗がん剤が機能していない可能性を否定するために、その抗がん剤に感受性である事が知られている細胞株を準備してテストしてみる必要があります。
(4) 感受性細胞株では細胞死が誘導される場合、HepG2に特異的な耐性メカニズムや、培養条件の違いなどが原因になっているかもしれません。例えば、HepG2ではその薬剤を細胞外にくみ出す機能が強く働いているかもしれません。培地の血清濃度が感受性細胞株とHepG2で異なるならば、血清がその薬剤の機能に影響しているかもしれません。あくまで「例えば」ですので、それ以外にも色々な可能性があり得る事はご理解下さい。
(5) ある種のシグナル伝達阻害剤では、耐性化すると同時にその薬剤に依存した増殖を示すようになる事が知られており、薬剤の投与を中止することによって、かえって増殖が抑えられたりする場合があります。抗がん剤の量を増やすとかえって増殖が亢進するという、予想外の結果から、新しい知見が得られる可能性もありますので、「間違った結果」と決めつけずよく原因を検討してみると面白いのでは、と思ったりします。
ご参考になれば幸いです。 |
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